移動ロボットの社会の中での活躍の場は着実に増えつつあるが,それが拡大するにつれてロボットに 課される問題も多くなり,要求される性能も高くなってきている。
高層化したビル内や地下街,段差の多い場所,災害現場などのような場所では, ロボットにそのような場所でもスムーズに移動できる能力が要求される。階段昇降ロボットに関しては, これまでいくつかの方法が提案されてきたが,それぞれに問題点があった。不整地の踏破性が高いと言われる クローラ方式は,接地面が広く安定性にすぐれるが,構造が複雑で重量も大きくなり, 階段などではステップを痛めることになりやすい。脚方式は,接地面を離散的に選択できるため, 比較的大きな障害物を乗り越えることができるが,その分ロボット自体の姿勢を安定にするための制御が難しくなる。移動ロボットで最も一般的に用いられる 車輪方式は,乗り越えられる段差の高さが小さく,車輪を大きくしたり,特殊な機構を組み入れる必要がある。
本研究では,回転する複数の棒が形成する波状の形を利用して階段をのぼることのできるロボットを提案する。 このロボットの用途としては,火災現場における消火活動を考えている。 火災現場の環境は著しく劣悪であり,火災の中を移動するための耐熱機能、消火で水浸しに なっても機能できる防水機能、そして高層ビルの階段を俊敏に昇っていく 対地適応機能と階段踊り場における軽快な旋回機能などが要求される。
階段昇降の方式として,回転連棒による波形進行を利用する。これは,
同一長さLの複数の棒を次の図に示すように一定の間隔sと位相差aで配置し,
各棒を中心部分(L/2のところ)を回転軸として同一速度で回転させたときに
形成される波形の進行を利用したものである。
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