戸建のための水圧駆動垂直揺れ免震装置
担当: 佐藤彰洋,吉澤雄太

研究背景
図1:水圧駆動垂直揺れ免震装置
 昨今の大地震の影響から耐震技術に注目が集まっている. しかし,耐震技術では建物全体で地震エネルギーを受けるため, 建物は倒壊をしないまでも揺れによるダメージを受け, 最悪の場合は室内での死傷者が出ることがある. 地震時の2次災害から高齢者や子供を守るためには耐震だけではなく地震の揺れを能動的に抑える 免震を行うことが効果的である. 一般家屋において水平揺れに対応した免震装置の開発はすでに多く行われているが, より被害の大きい直下地震の垂直揺れに対応したものは数少ない. そこで垂直揺れ免震装置の開発が必要となる. しかし,一戸建ての垂直揺れ免震装置は免震に加え, 平常時は建物を安定に支持するロッキング抑止が不可欠なため,これに関する技術課題がある.

研究の目的と概要
 そこで,本研究では直下地震の垂直揺れを対象とした免震機能と ロッキング抑止機能を有する新しい水圧駆動垂直揺れ免震装置を開発した. (図1)開発した免震装置は一戸建てを設置対象とし, 建物と基礎との間に一戸当たり3基の免震装置を配置するものとする.(図2)
図2:免震装置概略

 免震装置の構造について説明するため, 図3に垂直揺れ免震装置のアクチュエータ部分の断面図を示す. アクチュエータは2つのシリンダと4つのばねから成る. また,シリンダに水平方向の力がかからないように拘束するため,ガイドを設置する. 2枚の青いプレートがガイドを通じてシリンダ本体と地面を固定しており, また2枚赤いプレートが別のガイドを通じてシリンダのピストン部分と家屋を固定している. また,シリンダの駆動源としては,高出力で体積弾性係数が非常に高く, 万が一漏れた場合の安全性・環境親和性を考え,水圧を利用する.
 免震装置の動作について説明する. 地震発生時には制御弁によりシリンダ内の圧力を制御し, 地震の揺れを能動的に減衰させる力をシリンダから発生させる. 平常時には,ばねで建物の荷重をすべて支えるが, ばねだけの支持ではロッキング現象が起きてしまうため, シリンダ内を加圧密閉することにより免震装置の剛性を高め, ロッキング現象を抑止する. このようにアクチュエータ一つで免震装置に必要な機能を行うため, 生産コストが低くなり一般家屋への設置が期待できる.
図3:免震装置構造