N圧ハイブリッド油圧源を用いた高速高効率サーボシステムの研究
担当: 芦金石

研究背景
 近年,資源価格の乱高下や,CO2削減運動の活発化などから, 多くの企業は工場設備の省エネルギー化に力を入れている. そのなかで,油圧ユニットも、エネルギー効率の向上が求められている. そして,油圧サーボシステムは圧力が一定である従来の弁制御システムとポンプ制御システムに分類できる. 従来の弁制御システムは定容量ポンプとリリーフ弁からなる油圧源を用いるため, システムの応答は高いが,ポンプからの余分な流量は常にリリーフ弁から捨てられるだけでなく, システムの供給圧力は負荷の変動に関係なく一定に保たれることによりサーボ弁には必要以上な圧力降下(圧力損失)が生じる. つまり,油圧源は変動的な負荷の流量・圧力に適応した流量・圧力の制御(ロードセンシング)ができないため, 効率が低下する.
 一方,ポンプ制御システムはポンプの押しのけ容量あるいはポンプの回転数が制御されるため, 油圧源はロードセンシングが容易にできる. そのため,効率が高い.しかし,ポンプの押しのけ容量あるいはポンプの回転数制御は応答が低いため, サーボシステムの応答は低いという欠点がある.
 そこで,本研究は高応答高効率油圧サーボシステムを実現するため,N圧ハイブリッド油圧源を用いた油圧サーボシステムを提案する.

研究の目的と概要
 高応答な油圧サーボシステムを実現するには,高応答な油圧源とサーボ弁を用いる弁制御システムが必要である.一方,高効率な油圧サーボシステムを実現するには,ロードセンシングができる油圧源が必要である.したがって,高応答高効率油圧サーボシステムを実現するには,高応答なおかつロードセンシングができる油圧源と弁制御システムの組み合わせが必要である.そこで,本研究ではFig.2の破線枠内部分に示すN圧ハイブリッド油圧源を提案する.比較のため,従来の定圧弁制御サーボシステムをFig.1に示す.このN圧ハイブリッド油圧源は,従来の定圧弁制御サーボシステムの定容量ポンプにアンロード弁を並列に追加し,さらにリリーフ弁の代わりにN個のアキュムレータを用いたものである.N個のアキュムレータはそれぞれ高速ON/OFF弁を介してサーボ弁への供給回路に繋げている.提案した油圧源はポンプとアキュムレータが交代でサーボ弁に流量を供給するため,ハイブリッド油圧源と呼ぶ.
 N個のアキュムレータの容量は負荷に応じて個別に選定する.アキュムレータの窒素の充填圧を決め,N個のアキュムレータの出力油圧を低圧から高圧までN段階に設定しておく.アキュムレータ入口の高速ON/OFF制御弁を適切に制御すれば,出力圧力はN段階に制御できる.負荷駆動に必要なサーボ弁の供給圧に一番近いアキュムレータをサーボ弁に接続すれば,ロードセンシングが実現可能である.この油圧源にはリリーフ弁は不要なため,無駄流量が生じない.一方,ポンプはアキュムレータに充填したのちアンロード弁によりアンロードするため,ポンプ駆動の省エネルギーができる.
 しかしFig.2に示したN圧ハイブリッド油圧源ではアキュムレータ1台につき弁を1つしか用いていないため,ポンプからの圧油充填とサーボ弁へ圧油供給が同時になってしまい,比較的高周波数のサーボ制御においてアキュムレータが高速で切り換えられる場合には,アキュムレータの充填が不十分になる可能性がある.そして,Fig. 3の破線雑内部分に示した新しいN圧ハイブリッド油圧源を提案する.このN圧ハイブリッド油圧源では,アキュムレータ1台につき弁を2つ用いることで,ポンプからの圧油充填とサーボ弁への圧油供給が独立して行えるようになっている.この不十分充填の問題がない.


Fig.1 Common valve-controlled servo system

Fig.2 N-level pressure valve-controlled servo system
    (The first type)

Fig.3 N-level pressure valve-controlled servo system
    (The second type)