三重点における相変化を利用した携帯空圧源Dry Ice Power Cellの開発

担当:呉海帆

研究背景

空圧アクチュエータは高い出力/重量比を生成しやすいという特性から、人体装着用の人工筋肉や移動ロボットなどへの適用が期待されている。しかし、空圧源の役割を担う従来型エアコンプレッサは、サイズ・重量・騒音・エネルギー変換効率などの点で携帯用としては不向きであったため、空圧アクチュエータ実用化における大きな障壁となっていた。そこで、本研究では、人間1人が携帯できる程度のサイズ・重量でありながら、0.42 [MPa(gauge)]程度の圧力で比較的高出力と軽便性を両立できる圧力源Dry-ice Power Cellを開発した。

基本原理

ドライアイスは気化させると大気圧では体積が750倍まで膨張するため空圧源の媒体として使用することができる。ドライアイスを圧力容器に封入すると、左下図(a)〜(e)に示す相変化が行う。まず、昇華により圧力と温度は上昇する(a)。三重点O0.52[MPa(abs)],-56)に達すると固体が液化し始め(b)、固体が全部液化される(c)まで三重点の状態(固体、液体、気体共存)にあるため圧力は変化しない。一方、この三重点の状態では、気体を外部に大量放出しでも、圧力が下がらず、安定な放出が維持できる(d)(e)。気体を放出するプロセスの熱授受は右下図に示す。液相の一部を気化して外部に放出する際、液相の他の一部が凝固し、放出する凝固熱により、気体放出する際所要の蒸発熱を提供できる。その熱授受は容器内部の各相間の熱移転であり、瞬時に行うため、瞬時に大量の気体を放出しても、熱の平衡が保たれる。これは本研究の携帯空圧源Dry Ice Power Cellの基本原理であり、二酸化炭素の物理的特性を活用した定圧の空圧源となっている。

    

携帯空圧源Dry Ice Power Cellの構造

以上の原理をもとに本研究は、容器内を二酸化炭素の三重点の固液気混合状態の近くに保ち、さらに液体がなるべく多くなるように伝熱制御することによって0.42[MPa]の圧力で瞬時大量放出と長期持続放出機能を兼備する携帯圧力源を実現しようとするものである。写真および構造は下図に示す。

携帯空圧源Dry Ice Power Cell を有するエネルギー

Dry Ice Power Cellの重量は600g、収納できるドライアイスは430g、全重量は約1kg430gのドライアイスが気化すると体積218(nor)の気体が得られる。この気体は0.42[MPa]の圧縮空気として得られ、0℃で42Lの体積を有する。その気体は外部に対して約18[kJ](5Wh)の仕事をする能力を有している。実験で測定する最大パワーは150Wである。